家を買うときに悩みやすいのが、住宅ローンの頭金です。
「頭金は物件価格の2割必要」と聞いたことがある人もいれば、「最近は頭金なしでも家を買える」と言われた人もいるかもしれません。
結論からいうと、住宅ローンは頭金なしでも組める可能性があります。
ただし、頭金なしで家を買えることと、頭金なしで買っても安心できることは別です。
頭金を入れなければ、借入額は増えます。借入額が増えると、毎月返済額や総返済額も増えます。また、住宅金融支援機構の【フラット35】では、融資率が9割を超える場合、返済の確実性などをより慎重に審査するとされています。
この記事では、住宅ローンの頭金はいくら必要なのか、頭金なしで家を買うときに何に注意すべきかを、家づくり前の目線でわかりやすく解説します。
住宅ローンの頭金とは?
住宅ローンの頭金とは、家を買うときに住宅ローンではなく、自己資金から先に支払うお金のことです。
たとえば、3,500万円の家を買う場合に、自己資金から300万円を出して、残り3,200万円を住宅ローンで借りるなら、頭金は300万円です。
物件価格3,500万円
− 頭金300万円
= 住宅ローン借入額3,200万円
頭金を多く入れれば、借入額は少なくなります。
一方で、頭金を入れすぎると、手元のお金が減ります。
ここが非常に大事です。
家を買うときは、頭金だけでなく、諸費用、引っ越し代、家具家電、外構費、予備費なども必要になります。
つまり、住宅ローンの頭金は、多ければ多いほど良いという単純な話ではありません。
住宅ローンの頭金はいくら必要?
一般的には、住宅ローンの頭金は物件価格の1割〜2割程度が一つの目安とされることがあります。
たとえば、物件価格ごとに見ると、次のようなイメージです。
| 物件価格 | 頭金1割 | 頭金2割 |
|---|---|---|
| 2,500万円 | 250万円 | 500万円 |
| 3,000万円 | 300万円 | 600万円 |
| 3,500万円 | 350万円 | 700万円 |
| 4,000万円 | 400万円 | 800万円 |
| 5,000万円 | 500万円 | 1,000万円 |
ただし、実際にはここまで用意できない人も多いです。
特に、土地から買って注文住宅を建てる場合は、土地代、建物代、外構費、諸費用、家具家電まで含めると総額が大きくなります。
そのため、今は「必ず2割の頭金を用意してから家を買う」というよりも、頭金を入れるかどうかより、手元資金をどれだけ残せるかを重視した方が現実的です。
頭金なしでも住宅ローンは組める?
頭金なしでも、住宅ローンを組める可能性はあります。
いわゆる「フルローン」と呼ばれる形です。
ただし、すべての人が頭金なしで希望額を借りられるわけではありません。
住宅ローンでは、年収、勤務先、勤続年数、信用情報、他の借入、物件の担保評価などが見られます。
また、【フラット35】では、融資率は「借入額 ÷ 住宅の建設費または購入価額」で計算され、融資率が9割以下か9割超かによって借入金利が異なると説明されています。
つまり、頭金なしで借入額が物件価格に近くなると、審査や金利面で不利になる可能性があります。
頭金なしで家を買うメリット
頭金なしには、悪い面だけでなくメリットもあります。
1. 手元資金を残せる
頭金なしで家を買う一番のメリットは、手元資金を残せることです。
家を買うと、購入後にもお金がかかります。
- 引っ越し費用
- 家具・家電
- カーテン
- 照明
- エアコン
- 外構費
- 火災保険
- 固定資産税
- 修繕費
- 子どもの教育費
- 車の維持費
頭金を無理に入れて貯金がほとんどなくなると、家を買った後の生活が不安定になります。
住宅ローンの返済は長く続くので、手元資金を残すことはかなり重要です。
2. 家を買うタイミングを逃しにくい
頭金を貯めるまで数年待つと、その間に土地価格や建築費が上がることがあります。
特に注文住宅では、建築費の上昇や土地価格の変動によって、数年後に同じ条件で家を建てられるとは限りません。
そのため、頭金を貯めることだけを優先しすぎると、希望する土地や建築会社とのタイミングを逃すこともあります。
3. 住宅ローン控除を活用しやすい場合がある
住宅ローン控除は、一定の要件を満たす住宅ローン残高に応じて控除を受けられる制度です。
そのため、頭金を多く入れて借入額を大きく減らすより、あえて一定の住宅ローン残高を残した方が、制度上は有利に働くケースもあります。
ただし、住宅ローン控除は制度要件や入居時期、住宅性能によって変わります。
ここは個別判断になるため、税理士や金融機関、住宅会社に確認しながら判断した方が安全です。
頭金なしで家を買う注意点
1. 借入額が増える
頭金なしの一番大きな注意点は、住宅ローンの借入額が増えることです。
たとえば、3,500万円の家を買う場合で考えてみます。
| 頭金 | 借入額 |
|---|---|
| 0円 | 3,500万円 |
| 300万円 | 3,200万円 |
| 500万円 | 3,000万円 |
| 700万円 | 2,800万円 |
頭金0円と頭金500万円では、借入額が500万円違います。
この差は、毎月返済額にも総返済額にも影響します。
2. 毎月返済額が増える
借入額が増えると、当然ながら毎月返済額も増えます。
仮に35年返済、金利1.5%、元利均等返済でざっくり考えると、借入額500万円の差は、毎月返済で約1.5万円前後の差になります。
| 借入額 | 月々返済の目安 |
|---|---|
| 2,800万円 | 約8.6万円 |
| 3,000万円 | 約9.2万円 |
| 3,200万円 | 約9.8万円 |
| 3,500万円 | 約10.7万円 |
※金利1.5%・35年返済の概算です。
月1万円〜2万円の差でも、35年間続くとかなり大きな違いになります。
3. 金利条件が不利になることがある
頭金なしで借入額が大きくなると、金融機関から見たリスクも高くなります。
そのため、頭金を入れる場合よりも、審査が慎重になったり、金利条件が不利になったりする可能性があります。
【フラット35】でも、融資率が9割を超える場合は、融資率9割以下の場合と比べて返済の確実性などをより慎重に審査するとされています。
つまり、頭金なしは「誰でも簡単に借りられる」という意味ではありません。
4. 売却時にローン残高が残りやすい
頭金なしで家を買うと、購入直後のローン残高が大きくなります。
そのため、将来やむを得ず家を売ることになったときに、売却価格より住宅ローン残高の方が多くなる可能性があります。
たとえば、家を売ってもローンを完済できない場合、差額を現金で用意しないと売却が難しくなることがあります。
これは特に、次のような人は注意したいです。
- 転勤の可能性がある
- 将来住み替えの可能性がある
- 共働き前提でギリギリのローンを組む
- 変動金利で返済額を抑えている
- 土地より建物価格の割合が大きい
家は買った瞬間から自由に売れるわけではありません。
住宅ローン残高と売却価格の関係も、頭金なしでは重要になります。
5. 家づくり中の追加費用に弱くなる
注文住宅では、最初の見積もり通りに総額が収まらないことがあります。
よくある追加費用は次のようなものです。
- 地盤改良費
- 外構費
- 照明
- カーテン
- エアコン
- 造作家具
- コンセント追加
- 水回り設備のグレードアップ
- 登記費用
- 火災保険料
- 引っ越し費用
頭金なしでローンを組んだうえに、手元資金も少ないと、こうした追加費用に対応しにくくなります。
特に注文住宅では、頭金よりも予備費の方が大事になる場面があります。
頭金を入れるメリット
1. 借入額を減らせる
頭金を入れる最大のメリットは、借入額を減らせることです。
借入額が減れば、毎月返済額も総返済額も下がります。
住宅ローンは長期の借入なので、借入額を少し減らすだけでも、将来の負担は変わります。
2. 審査上の印象が良くなりやすい
頭金を用意できているということは、一定の貯蓄力があるという見方もできます。
金融機関から見ると、自己資金を入れている人の方が、返済計画に余裕があると判断されやすい場合があります。
もちろん、頭金があるから必ず審査に通るわけではありません。
ただし、年収に対して借入額が大きい場合や、他の借入がある場合は、頭金を入れることで審査上プラスに働くことがあります。
3. 金利条件が良くなる可能性がある
住宅ローンでは、頭金の有無や借入割合によって金利条件が変わることがあります。
【フラット35】では、融資率が9割以下か9割超か、団体信用生命保険の種類などに応じて借入金利が異なるとされています。
そのため、物件価格の1割程度を頭金として入れられると、金利面で有利になる可能性があります。
頭金を入れるデメリット
1. 手元資金が減る
頭金を入れる最大のデメリットは、手元資金が減ることです。
たとえば、貯金600万円の人が頭金500万円を入れると、手元には100万円しか残りません。
家を買った直後は、想定外の支出が出やすいです。
- エアコンを追加したい
- 外構費が上がった
- カーテン代が思ったより高い
- 家電を買い替える必要が出た
- 引っ越し費用が増えた
- 子どもの支出が重なった
こうしたときに、手元資金が少ないと一気に家計が苦しくなります。
2. 住宅ローン控除とのバランスが悪くなることがある
頭金を多く入れすぎると、住宅ローン残高が少なくなります。
住宅ローン控除はローン残高をもとに計算されるため、借入額を減らしすぎると控除額も小さくなる場合があります。
もちろん、借入を減らすこと自体は悪いことではありません。
ただ、住宅ローン控除を考えるなら、頭金をどれだけ入れるかは、金利、控除額、手元資金のバランスで判断した方がいいです。
頭金はいくら入れるのが現実的?
個人的には、家づくり初心者には次の考え方がわかりやすいと思います。
| 状況 | 頭金の考え方 |
|---|---|
| 貯金が少ない | 無理に頭金を入れない |
| 手元資金に余裕がある | 物件価格の1割を検討 |
| 借入額がギリギリ | 頭金で借入額を下げる |
| 金利条件を良くしたい | 融資率9割以下を意識 |
| 子育て世帯 | 頭金より生活予備費を優先 |
| 車ローンがある | 返済負担率全体で判断 |
| 注文住宅 | 追加費用・外構費を残す |
大切なのは、頭金を入れること自体ではありません。
家を買った後も、手元資金を残して安心して暮らせることです。
頭金なしで買ってもいい人
頭金なしでも検討しやすいのは、次のような人です。
- 収入が安定している
- 他の借入が少ない
- 毎月返済に余裕がある
- 手元資金を残したい理由がある
- 将来の教育費や車費用を見込んでいる
- 住宅ローン審査に余裕がある
- 物件価格が年収に対して高すぎない
- 家を長く住み続ける予定がある
この場合、頭金なしが必ず悪いとは言えません。
むしろ、無理に頭金を入れて生活防衛資金を削るより、手元資金を残した方が安全なこともあります。
頭金なしで買うと危ない人
一方で、次のような人は頭金なしに注意が必要です。
- 借入希望額が年収に対して大きい
- 車ローンや残クレがある
- リボ払いやカードローンがある
- ボーナス払い前提で返済計画を組んでいる
- 手元資金がほとんどない
- 変動金利でギリギリの返済額になっている
- 将来、転職や収入減の可能性がある
- 子どもの教育費がこれから増える
- 注文住宅で外構費や追加費用を見込んでいない
この場合、頭金なしで買うと、住宅ローンに通ったとしても、住み始めてから家計が苦しくなる可能性があります。
家を買う前に残しておきたい手元資金
頭金を入れるかどうかを考える前に、まずは手元資金をいくら残すかを考えましょう。
最低でも、次の費用は見ておきたいです。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 引っ越し費用 | 20万〜50万円 |
| 家具・家電 | 50万〜150万円 |
| カーテン・照明 | 30万〜100万円 |
| 火災保険・地震保険 | 数十万円 |
| 外構追加分 | 50万〜200万円以上 |
| 生活防衛資金 | 生活費3〜6か月分 |
| 予備費 | 100万円前後あると安心 |
もちろん家庭によって必要額は変わります。
ただ、頭金を入れた結果、手元に数十万円しか残らない状態はかなり不安です。
家を買った後の安心感を考えるなら、頭金よりも手元資金の確保を優先すべきケースは多いです。
頭金なしで注文住宅を建てるときの注意点
注文住宅の場合、建売住宅やマンションよりも資金計画が複雑になりやすいです。
特に注意したいのは、次の3つです。
1. 土地代と建物代の支払いタイミングが違う
注文住宅では、土地を買ってから建物を建てることがあります。
この場合、土地代、建物の契約金、中間金、最終金など、支払いタイミングが分かれます。
住宅ローン実行前に支払いが必要になる場合は、つなぎ融資や分割実行が必要になることがあります。
2. 外構費が後回しになりやすい
注文住宅では、建物本体に予算を使いすぎて、外構費が不足することがあります。
外構費は、駐車場、フェンス、門柱、アプローチ、庭、照明などにかかります。
最初に見落とすと、住み始めてから「外まわりが未完成」のような状態になることもあります。
3. 追加費用が出やすい
注文住宅では、打ち合わせ中に仕様変更が起こりやすいです。
- キッチンをグレードアップしたい
- 収納を増やしたい
- コンセントを追加したい
- 照明をこだわりたい
- 床材を変更したい
- 造作洗面にしたい
こうした変更は一つひとつは小さく見えても、合計すると数十万円〜数百万円になることがあります。
そのため、注文住宅では頭金を多く入れるより、予備費を残しておくことがかなり大切です。
頭金を入れるか迷ったときの判断基準
迷ったときは、次の順番で考えると整理しやすいです。
1. 生活防衛資金を残せるか
↓
2. 諸費用・引っ越し・家具家電を払えるか
↓
3. 注文住宅の追加費用に対応できるか
↓
4. 月々返済に無理がないか
↓
5. 頭金を入れることで金利や審査が有利になるか
この順番で見ると、頭金を入れるべきかどうかが判断しやすくなります。
大事なのは、「頭金を何万円入れるか」よりも、家を買った後に家計が崩れないかです。
まとめ:住宅ローンの頭金は「入れる額」より「残す額」が大事
住宅ローンの頭金は、物件価格の1割〜2割が一つの目安と言われることがあります。
しかし、今は頭金なしでも住宅ローンを組める可能性があります。
ただし、頭金なしで家を買う場合は、借入額が増え、毎月返済額や総返済額も増えます。融資率が高いと、審査や金利条件が慎重に見られることもあります。
最後にポイントを整理します。
- 頭金は物件価格の1割〜2割が一つの目安
- 頭金なしでも住宅ローンを組める可能性はある
- ただし、頭金なしは借入額が増える
- 借入額が増えると毎月返済額・総返済額も増える
- 融資率9割超では審査や金利面で慎重に見られることがある
- 頭金を入れすぎると手元資金が減って危険
- 注文住宅では外構費・追加費用・予備費を残すことが大切
- 頭金の額より、家を買った後の生活資金を残すことが重要
住宅ローンは、借りられるかどうかだけで判断するものではありません。
大切なのは、家を買った後も安心して暮らせることです。
頭金を入れるか迷ったら、「いくら入れるか」ではなく、まずは「いくら手元に残すべきか」から考えてみてください。